Piano Stories 100 ~100台のピアノ物語~ ピアノに新たな息吹をつなぐ人たちへのスペシャルインタビュー《メーカー編》
2022年、銀座・山野楽器の創業130周年を機に展開してきた『Piano Stories 100 ~100台のピアノ物語~』は、山野楽器が運営する音楽教室で使用してきた100台のピアノが時を経てその役目を終えようとした際に、生まれ変わって第二の人生を迎えられないかを考えたものでした。
山野楽器の想いは、愛するピアノへのお手紙という形でたくさんのご応募をいただき、このプロジェクトとなって始まりました。厳正なる審査を経て生まれ変わったピアノをお届けしております。
今回、100台のピアノを修理、調律を施し、一軒一軒お届けするということは私たちにとっても壮大なプロジェクトとなりました。そこで、このコーナーではこのプロジェクトに携わったさまざまな人の想いを取材し、その一部をご紹介したいと思います。
第一回目のインタビューは、「Piano Stories 100~100台のピアノ物語~」のすべてのピアノを製造したメーカー「ヤマハ」の方に今回の企画について楽器への想いを語っていただきました。
100台のピアノ物語スペシャルインタビュー
(株)ヤマハミュージックジャパン
鍵盤営業部 ピアノ・EKBマーケティング課
事業企画部 ブランドショップ推進課
主事
西 英行さん
(記事中の役職名は取材当時)
一連の作業には山野楽器本社をはじめ、音楽教室、メーカーのヤマハ、輸送会社などが総力を挙げて取り組みました。事業のスケールが大きくなり、内容が複雑になればなるほど、やらなければならないことが増えていきます。期日が限られた中でスケジュール通りに着実な作業を進めるためには、多方面とのコミュニケーションが欠かせません。まったく専門外の分野との交渉も当然出てきます。
今回のプロジェクトのピアノはすべてヤマハ製。そのヤマハ音楽製品の販売や防音設備などのアフターケアなどを手掛けているヤマハミュージックジャパンの西さんは「何の仕事もそうですが、一人だけでは何もできません。みんなが一つの目標に向かって協力することで達成できるのです」と話します。
入社は2009年。それまでは全く畑違いのプラント会社勤務で、海外の砂漠に発電所を建設する仕事に従事していました。そんな環境下での楽しみは、仕事が終わった後に週1回ヤマハのサックス教室に通うことだったそうです。「以前から楽しげに趣味を満喫する大人たちに憧れていました。自分もあのようになりたいと」。
ヤマハミュージックジャパンに転職したのも、そんな気持ちが忘れられなかったから。求人募集のタイミングもピッタリはまり、転職前まではサックスを演奏することが夢でしたが、最近は娘さんもピアノを始めており、家族で音楽を楽しんでいるとのこと。「ピアノ作りに携わる部門と仕事をしていると、ピアノは家電などとは違って、工芸品のような特殊な商品だなと思います。流れ作業ではなく、自分たちの手でじっくりと作り上げていくという感覚が強いです。自分の分身のようで、腕前が随所に発揮できる貴重な品ですね」とピアノの魅力を熱く語ってくれました。
営業やマーケティングなどさまざまな経験を積んできたことをプロジェクト内でフルに発揮し、また、みんなのピアノに対する思いの深さやピアノを初めとする〝音楽の魅力〟を改めて知ることとなったと話す西さん。
これからの目標は、楽器仲間をさらに増やしていくこと。今回のプロジェクトに参加したことで、また新たな人たちと知り合い、触れ合うこともできたと言い、これも、大きな財産になっているそうです。ここで出会い、築いたネットワークをさらに拡大させていくことを、今は目指していらっしゃいます。
【文・細谷 正勝】