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『今昔物語』山野楽器スタッフ編 河田龍仁(Tp)

大阪大学 ザ・ニュー・ウェイヴ・ジャズ・オーケストラ
2017年 第48回大会出場(第9位 審査員賞受賞)

※2025年5月寄稿(現在、ウインドクルー勤務)
 私は大学時代、大阪大学の「軽音楽部SWING」というビッグバンドやコンボ問わずジャズを中心に演奏する団体に所属し、トランペットを演奏していました。加入したのは大学2年生の春。最初からビッグバンドをやっていたわけではありません。実は自分自身は別の大学に在学しており、その大学でもコンボ専門のジャズ研サークルに1年生から所属していました。活動を通じ他大学の友人が増えていく中で、大阪大学軽音楽部SWING所属の同級生の1人に「人数不足だから」ということで勧誘され、ビッグバンドにも興味が湧いていた当時の自分にとっては渡りに船と加入を即決しました。

 さて、加入後はとても苦労しました。自分は大学生になってから音楽を始めたこともあり、それまでまともに楽譜を読んだことがなく、合奏では本当に追いつかない追いつかない…。非情にも一定のテンポを刻み続ける合奏の中で、楽器を手にしながら成す術もなく立ち尽くしたことが何度あったかわかりません。またトランペットという楽器はとても難しく、始めたてのころは一定の音域をまともに演奏することさえできません。既に楽器が上手な周りの同級生になんとか食らいつこうと毎日練習を欠かしませんでした。

 そんな日々の中で、「軽音楽部SWING」におけるレギュラーバンド、The New Wave Jazz Orchestraの演奏を始めて聴く機会がありました。「夏にはビッグバンドの甲子園みたいな大会もあって、去年は4位だったんだよ」と仲間からYBBJCの存在を教えてもらったのもその時でした。圧倒されました。同じ大学生でこうも違うのか。もっと早く音楽を始めていれば。来世はこのバンドで演奏するんだ。来世はYBBJCに出るんだ。頭の中を色んな思いが駆け巡りました。この後このバンドに加入し、YBBJCに出場することになるとは当時全く思っていませんでした。

 それでも日々の練習を重ね続けた成果が実ったためか、トランペットの人数が相変わらず不足していた幸運も相まって大学4年生の春にThe New Wave Jazz Orchestraの一員になることができました。レギュラーバンドというのは週に何度も合奏しています。平日は在学している大学の後に阪大へ、土日は朝から阪大へ…。これは自分が完全に悪いのですが、3年生までに卒業単位を全く取り終えていなかったため、4年生という就活がメインとなりがちな学年でも大学に毎日通っては授業をみっちり受け、3年次までとは比較にならないほど阪大に通い、梅田で飲食業のバイトもしっかりやり、友人とはよく飲みよく遊び、という生活を送っていた大学4年生の頃は、人生で一番忙しくも充実していた時だったのではと思います。

 7月下旬頃からは毎日合奏があり、YBBJCの一週間前からは長野での合宿もあり、練習漬けの日々を乗り越えて迎えた本番の演奏は人生で一番楽しい瞬間でした。特に印象に残ったのは、演奏後のお客さんたちの轟くような歓声。学バンで最も大きな舞台ですから、あれほどの音圧の歓声もあの舞台ならでは、と言えるのではないでしょうか。嬉しさや楽しさ、やってきた練習の日々の記憶などさまざまな感情が一気に押し寄せ、忘れられない思い出となりました。このバンドで演奏するのが、YBBJCに出るのが来世ではなく今世で本当に良かったと思います。

 今では管楽器専門店であるウインドクルーに勤めていますが、学バン所属のお客様、とりわけ大学生から楽器を始めましたなんて学生を見つけると老婆心のようなものが芽生え、「これはどう?あれはどう?」とお節介を焼いてしまうような日々です。大学生のお客様の生年月日を見るごとに、自分の学生時代が遥か彼方へ遠ざかっていくような思いですが、自分にとっては昨日のことのような思い出です。

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