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『今昔物語』 水谷薫さん(TS)

■青山学院大学ロイヤル・サウンズ・ジャズ・オーケストラ
1982年 第13回大会出場 (敢闘賞受賞)
1983年 第14回大会出場 (奨励賞受賞)

※2006年、第37回大会に寄稿された文章を当時のまま掲載しています。
 世間は只今ビッグ・バンド・ブームだそうである。ちょっと前の映画「スウィングガールズ」あたりのヒットによるところなども結構あるらしい。理由はどうであれビッグ・バンド・ジャズがブームだというのは大変結構な事であると思う。
 自分の事を考えてみると、高校生の頃、たまたま別冊スイングジャーナルなるもののページをめくっている時に「YAMANO」の存在を初めて知り、たまたまその年に京都に遊びに行った際、これもたまたま行った同志社大学の学館ホールで「ザ・サード・ハード・オーケストラ」の演奏を目の当たりにした(なんとゲストとして共演していたのはフィル・ウッズでした)瞬間から私にはずうっとビッグ・バンド・ブームがつづいている。
 もちろん約30年間のマイブームがビッグ・バンド・ジャズであるという私も、めちゃめちゃミーハーな学生生活を過ごしていたため、色々なジャンルの音楽に身を染めた事もある。しかしやはり帰る場所は常にビッグ・バンド・ジャズであった。
 そんなわかったような事を言っているわたくしなので、現在でも出来るだけコンサートやJazz Clubあたりには出かけるようにしている。また、いまだに飽きもせずに仲間達とビッグ・バンドを結成して日々活動している。そんな中で最近特に感じるのはプロのビッグ・バンドでの「YAMANO OB」の活躍ぶりである。もちろん、我々よりも先輩の方々の「YAMANO OB」の活躍も当然あるわけであるが、最近はビッグ・バンドで活躍している「YAMANO OB」が多数いると言う大変うれしい事実である。
 最近私もやっと大人になったのか、巷における音楽状況がやたらと気になりだした。つまり最近の10代、20代の若者達は本当に良い(これは抽象的な表現ではあるけれど、この表現がいちばんマッチする)音楽にふれられているのかがとても心配になってきたのである。10代の頃から音楽に対しては柔軟な頭を持って、いかようなジャンルの音楽も理解し、また理解するように努めてきた私ではあるが、例えば最近の深夜のTV番組から流れているどうでもいいような音楽の洪水。いかにも適当にコピー&ペーストで作られたような音楽の数々。
 本当にこんな音楽を聴いていて彼らは立派な大人になれるのだろうかと、大変心配になる。我々は人生の早い時期に良い音楽に触れる事が出来たおかげでこんなにもちゃんとした大人にひとまずなることが出来た(一般の社会的にはあやしいものではあるが自分ではそう思っている)。しかしこのような状況がつづくと、若者達は立派な大人にはなれないし、またこの国の音楽レベルが上がって行かないのではないかと大変心配になる。若者達を立派な大人にするためには音楽が担う部分というのは少なからずあると思うし、若者達がちゃんとしなければこの国の行く末はかなり寂しいものになると思う。そういった理由で我々には「良い音楽」をどんどん世の中に発信をしていくという義務があると思う。
 そこで私が密かにではあるが、大いに期待をするのが前出の「YAMANO OB」の諸氏の活躍である。最近のプロ・ビッグ・バンドにおける彼らの活躍は本当に素晴らしいものがある。私は近い将来にプロのビッグ・バンドとしての「YAMANO ALL STARS」を是非聴いてみたいと思う。そのようにプロの世界では彼らにがんばってもらい、アマチュアの世界では我々社会人ビッグ・バンドとそして学生ビッグ・バンドの諸君ががんばって良い音楽を目指して、そして活動をしていけば、微力ではあるだろうが、この国の音楽レベルの向上に役立つ事が出来、そしてこの国の未来は大変明るいものになると思う。
 そういった意味においても学生ビッグ・バンドで活躍している学生諸君の中には、今後プロになりたいと思っている人はどんどんプロを目指して欲しいと思うし、プロになりたいと思わない人は社会人になっても是非音楽を続けて欲しいと思う。そしてそれがくどいようではあるが、この国の未来のためになるのだから。今年も諸君の健闘を祈る。


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