『今昔物語』 宮嶋みぎわさん(作曲家・ピアニスト)

■上智大学 ニュー・スウィング・ジャズ・オーケストラ
1995年 第26回大会出場
1996年 第27回大会 出場
ピアニスト・作曲家・アレンジャー
※2008年、第39回大会に寄稿された文章を当時のまま掲載しています。
ヤマノは私に「人との向き合い方」を教えてくれた
私は大学卒業後7年半、会社員として激しく働いた後、転身して音楽家になりました。
サラリーマン時代と今とで、どんな違いがありますか?とよく聞かれますが、実は共通していることの方が多いと思っています。
特に強く感じるのは「人とどのように向き合うか、その方法を知っていることが大事」ということ。社会に貢献するにあたっては、どんな仕事であろうとひとりきりで完結することがないんですよね。必ずグループを作り、チームワークで何らかの価値を世の中に提供していく。その際絶対に必要となる「人との向き合い方」を学ばせてくれた場が、学生ビッグ・バンドでした。
日本には恥の文化というものがあるそうですね。何か主張して恥をかくより、和を乱さずシーンとしておくのがベターと考える気質があるらしい。私も高校まではそんな日本人の一人で、人の気持ちを推し量って空気読みまくりで控えめで・・・。
ところがどっこい。ヤマノを目指すとなったらそうはいかない。
隣のヤツが間違えたら心底むかつくし、練習しないヤツはぶっとばしてやろうかと思う!真剣だから思いのままについ行動してしまい、いい加減にして!と叫んだけれど・・・仲間が傷ついただけで良い結果は生まれなかったのでした。
では、どうすればよかったのか。考える>言ってみる>失敗!>誰かを傷つける>自分も悲しくなる>一晩泣く>また新しい言い方を考える・・・。こんなことばかり繰り返しながら、学バン時代を過ごして来た気がします。
もしヤマノが無かったらどうだったろう?!と想像してみました。私は多分、大和撫子のままだったでしょう。優しく常に誰かの気持ちを思いやって。
しかし、社会に何か素敵なものを提供すべく、一歩踏み込んだ行動をする時には、それでは足りない。様々な仕事をする中で今、そう実感しています。これまでの和を飛び出して、全てをブレイクスルーした上で、新しい和のかたちを形成していくことが必要で、その際、誰かと本気でぶつかった経験があるか無いか、が生きてくる。人と人とは、何度もぶつかり合う中ではじめて、段々に良い距離が分かるものなのです。失敗を重ねることが大事で、その中で次第に傷つけ合わなくても互いの主張を上手に伝え合えるようになっていくんですよね。
こうしている間にも、1秒ごとに全てのものが移り変わり、新しい時代が生まれています。そんな変革の中でも価値を提供できる深みのある人間というのは決して、壊すことを恐れる人間ではない。ヤマノに取り組む中で皆さんがそうしてきたように、情熱を持って取り組み、何かを壊しながらも新しい和を作ることの出来る人こそが、世の中が待っている人なのだと思うのです。今年もこのコンテストがたくさんの素晴らしい若者を輩出していることを嬉しく思います。皆さんが仲間達とぶつかり合いながら探してきた渾身のサウンド、心から心から楽しみにしています。頑張って!!