『今昔物語』 五十嵐誠さん(トロンボーン・プレイヤー/作・編曲家/ディレクター)
■大阪大学 ザ・ニュー・ウェイヴ・ジャズ・オーケストラ
1999年 第30回大会出場(TBSラジオ賞受賞)
2000年 第31回大会出場(スイングジャーナル賞受賞)
2001年 第32回大会出場(TBSラジオ賞/優秀ソリスト賞受賞)
トロンボーンプレイヤー
※2004年、第35回大会に寄稿された文章を当時のまま掲載しています。
夏=山野という図式は学生ビッグ・バンドを離れた今でも変わりません。阪大は練習環境では群を抜いて劣悪であったと思います。炎天下での練習(練習BOXは暑すぎて使えない為野外で合奏…)はいつまでも忘れられない経験です(できれば避けたかったけど…)。合奏の録音を聞き直しても蝉の鳴き声がうるさかったり、応援団の「オゥッス」が入っていたり、大学から怒られたり、ピアノの調律がかなりアバンギャルドになったり、ちょっと楽器を置いておくと 熱くて持てなくなっていたり、突然の雨で録音機材がびしょ濡れになったり、巨大かつ超凶悪な蚊の大群に襲われたり、そんな中で演奏に関して言い合いになったり…。よくそんな事を毎日続けられたなぁと思いますが、当時はそれが当たり前だったという事を今考えるとすごい話です。
高校2年生の時に山野のハイライトCDを手にし、大学生の演奏の凄さに圧倒されました。絶対に山野のステージに立ちたい!阪大のバンドメンバーとして出場したい!と思ってしまったのがそもそもの始まり。念願かなって大学2年生で初めて山野を経験しましたが緊張のあまり演奏の事を覚えていません。3年生ではコンサートマスターとしてバンドを引っ張るべきなのにプレッシャーに負けてしまい自分のフィーチャー曲で大失敗。メンタル面の弱さを嫌というほど思い知らされましたし、バンドメンバーに対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。次の年こそはと臨んだ4年生時のバンドはほとんどのメンバーが大学から楽器を始めたという状況。でもその逆境が「自分達のバンドが一番よい音楽を演奏するには自分は何をすべきか」という事を考えさせ、結果的に聴き手を十分に意識した音楽作りが出来たと思います。戦力を覆い隠すほどの結束力。これは学生バンドならではの、しかも聴き手に対して最もストレートな力だと思います。だから山野は凄いんですよね。そんな演奏が次から次へと聴けるイベントは類を見ないと思います。
山野は今年で35回を数え、出演者の方々の年齢層は変わらないもののその背景はこれからも当然変化し続けていきます。それはルールであったり、ノウハウであったり、好みであったり、アレンジであったり、パフォーマンスであったり、ソロであったり。望むべくはその時自分たちが、カッコいい!聴いてほしい!と思える演奏にストイックに向かっていって欲しいという事です。今年も熱演を期待しています!
最後になりますが、これまでYAMANO BIG BAND JAZZ CONTESTを支えてきてくださった全てのスタッフ、関係者の皆様に心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。そしてこれからもこのコンテストが出演者の皆様にとって有意義なイベントであります事を深く願っております。