Loading...

『今昔物語』 神保彰さん(ドラマー)

■慶應義塾大学 ライト・ミュージック・ソサエティ
1978年 第9回大会出場(特別賞受賞)
1979年 第10回大会出場(優秀賞受賞)
ドラマー

※2004年、第35回大会に寄稿された文章を当時のまま掲載しています。
山野の夏
 YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST 35周年、おめでとうございます。バンドコンペは数あれど、これだけ長い間続いているのはここだけでしょう。継続は力なり。スタッフの皆様の情熱に感謝です。
 ビッグバンドをたしなむ学生にとって、夏は山野一色です。僕も当時の夏の思い出といえば、山野合宿での出来事ばかり。1年目は写譜の毎日でした。生まれて初めて書いたサックスのパート譜を先輩の手元に持っていくと、「なんだこりゃ?汚くて読めないじゃん。書きなおし!」同輩も、僕に書かせるのはインクと時間の無駄と判断し、音符の少ないリズム隊の譜面専門になりました。最終日の打ち上げでは泥酔者続出。夜中の合宿所に救急車のサイレンが近づいてくる情景は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いています。
 2年目は、レギュラーとして舞台に上がる事になりました。バンマスが選んだのは、サドメルの難易度ウルトラC級の難曲。緊張のあまり、どんな演奏をしたのか全く覚えていません。芳しくなかった事だけは確かのようです。その反省から、翌年にはベイシーの思いっきりオーソドックスな曲をセレクト。余裕を見せようという作戦が空回りし、逆に緊張を招いた結果は、やはり芳しいものではありませんでした。
 結果はどうあれ、一つの目標にメンバー全員が一丸となって向かっていく体験、そしてその中で培われる連帯感こそが、山野に参加した者の心に、忘れがたい思い出として刻まれて行くのです。その後の人生で、そう何度も経験する事ではないかもしれません。
 「かけがえのない35回目の夏」がやってきました。山野経験者の端くれとしてアドバイスするとすれば、あまりにも月並みで恐縮ですが、「なるべく緊張しないで」という事くらいでしょうか。そうはいっても、やはり緊張してしまうんだろうな。緊張の夏、山野の夏。

『YBBJC今昔物語』ページはこちらから