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今こそジョスカン!~ジョスカン・デ・プレ没後500年記念 

今こそジョスカン!~ジョスカン・デ・プレ没後500年記念 銀座本店 古楽担当スタッフがオススメするジョスカン・アルバム
 
2021年、古楽界の最大の話題と言えば、ジョスカン・デ・プレ没後500年記念!ヨーロッパではもちろん、日本でもたくさんのコンサートやイベントが企画され、大きな盛り上がりが予想されます(無事開催できますよう!)。この特集では、ジョスカンの記念の年にあわせて発売されたCDを中心に、ジョスカン・デ・プレの魅力を存分に楽しめるCDをご紹介します。これまでジョスカン・デ・プレの音楽をご存じなかった方も、この記念の年に、ぜひジョスカン・デ・プレの豊饒なる音楽世界に浸ってみてください!画像はジョスカン・デ・プレの肖像画。今では失われてしまったという生前に描かれた肖像画からの木版画(1611年)。(須田)
 

  • レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたジョスカン・デ・プレ?
    『レオナルド・ダ・ヴィンチ:音楽家の肖像』

    CD紹介に入る前に、まずはジョスカン・デ・プレってどんな人?というところから。詳しい解説はCDのブックレットやwikipediaなどをご参照いただきたいのですが、概略だけ触れておきます。
    ジョスカン・デ・プレ(1450/1455?~1521)は、盛期ルネサンスのフランドルの作曲家。存命中から高い名声を誇り、音楽家としては当時では考えられない厚遇で、ヨーロッパ各地の宮廷に招かれていました。フランスで、アンジュー家のルネ善良王やルイ11世に仕えた後、ミラノで大聖堂付きの歌手として活躍、その後もローマの教皇庁礼拝堂付き聖歌隊の一員となったり、フランスのルイ12世の宮廷音楽家になったり、フェッラーラ公に仕えたりするなど、ヨーロッパ各地からお呼びがかかるほどの大音楽家だったのです。そんな名声を勝ち得た理由はもちろん、天才的な作曲技法。当時の最先端の技法を見事に操り、どんな複雑な技法を用いても、極めて自然に響かせる完成された作曲技法を持っていたからでしょう。彼から作品を捧げられた王侯貴族たちは鼻高々だったに違いありません。
     ジョスカンは数多くの作品を残しましたが、その中心となるのはミサ曲です。ジョスカンのミサ曲全曲録音を完成させたタリス・スコラーズの指揮者ピーター・フィリップスは、ジョスカンのミサ曲の後世への影響について、「ベートーヴェンの交響曲と同等の業績と考えられるようになってきている」としています。ジョスカンのミサ曲はまさにその作曲技法の粋が込められた傑作揃いなのです。
     さて、ここに掲げた画像は、かの有名な「万能の天才」レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「ある音楽の肖像」です。実はここに描かれた音楽家はジョスカンではないかという説があります。ジョスカンとレオナルドは同時代人であり、活躍の場も似通っていました。特にルイ12世やエステ家とのつながりは、共通しており、出会っていた記録さえ残っていないものの、間違いなくお互いを知る関係ではあったでしょう。キャリアのスタートを音楽家として切ったとも言われるほど音楽にも高い関心を示していたレオナルドですから、高い名声を誇っていたジョスカンに興味を持たないわけがありません。もしかしたらルイ12世やエステ家の宮廷で出会って、意気投合したのかもしれない、などと考えると楽しくなりますね。

  • ジョスカン・デ・プレ歌唱の代表盤にして歴史的名歌唱!
    『ジョスカン・デ・プレ:ミサ曲「パンジェ・リングァ」&ミサ曲「ラ・ソ・ファ・レ・ミ』

    ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズ

    GIMELL PCDGIM009 輸入盤国内仕様日本語解説付き

    ジョスカン・デ・プレのアルバムといえばまずはこれ!録音が1986年ですからすでに30年以上経過していますが、流れのはやい古楽演奏にあって、現在もその価値が衰えることのない決定的名盤です。タリス・スコラーズのジョスカン・デ・プレ・ミサ曲全曲録音の記念すべき第1弾でした。ミサ曲「パンジェ・リングァ」は、数あるジョスカンのミサ曲の中でも代表作として、おそらく最も知られている楽曲です。グレゴリオ聖歌「パンジェ・リングァ(舌よ、歌え)」の旋律(CDにはこの基になったグレゴリオ聖歌の歌唱も含まれています)を共通主題にして、ミサの各曲が作られています。キリストの聖体を讃えるこのグレゴリオ聖歌自体が、「歌え」というだけあって、キャッチーであり、このキャッチーな主題をさまざまな趣向を凝らして練り上げ、ミサ曲に仕立て上げるジョスカンの高い作曲手腕を堪能できるミサ曲となっています。聴きやすいメロディが主題となっているので、極めて自然に耳に入ってくる作品なのですが、実際に歌うとなるとかなり難しいのです(私は、アマチュア合唱団で経験済みです!)。旋律線の扱い、各パートの受け渡し、ハーモニー、リズムの複雑さ、などなど、歌っていても「すごいな、この曲」と感嘆してしまいます。この作品を見事に歌いこなすタリス・スコラーズの歌唱には素直に感動する他ありません。CDにはもう1曲、ミサ曲「ラ・ソ・ファ・レ・ミ」という、凝ったミサ曲も収録されています。こちらも単純な音の並びを堂々としたミサ曲に作り上げるジョスカンの天才的な手腕が感じられる作品です。このアルバムは、ジョスカンの作曲技法のすごさを音楽として体感できる最高の一枚なのです。

  • タリス・スコラーズのジョスカン・シリーズ最終巻!
    『ジョスカン・デ・プレ:ミサ曲「フェッラーラ公エルコレ」、ミサ曲「恋の相手を変えたのなら」、ミサ曲「嘆きながら」』

    ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズ

    GIMELL PCDGIM051 輸入盤国内仕様日本語解説付き 

    30年以上に渡って続けられたタリス・スコラーズによるジョスカンのミサ曲全集が2020年後半についに完成!全曲録音は世界初で、音楽録音史の大偉業と呼べるシリーズです。そのどれもが超ハイレベルの歌唱ですが、なかでも最終巻となったこのアルバムの充実度には驚かされます。
    ミサ曲「フェッラーラ公エルコレ」は、フェッラーラ公のエステ家のエルコレ1世のラテン語名を音階化し、これを定旋律として曲に盛り込んだ大変手の込んだミサ曲です。
    Hercules Dux Ferrarie(ラテン語でフェッラーラ公エルコレの意味)
    レドレドレファミレ
    re ut de ut re fa mi re
    Her cu les dux fe rra ri e
    若干強引に音を割り振っている気はしますが、献呈された方としては光栄だったに違いありません。この定旋律が多様に変化して、ミサ曲を作り上げています。その多彩さはまさに目を見張るほど。曲を聴きながら、この定旋律を追うだけでもジョスカンの作曲技法の冴えを知ることができる傑作です。
     ちなみに、CDジャケットはフェッラーラ宮廷で活躍していた画家ドッソ・ドッシによるエルコレ1世の肖像。エルコレ1世は息子アルフォンソの妻として、教皇アレクサンドル6世の娘で、チェーザレ・ボルジアの妹であるルクレツィア・ボルジアを迎えることに成功するなどローマ教会との結び付きを強固なものとし、政治的にもフェッラーラを重要な都市にしました。また娘にはその後、ゴンザーガ家に嫁ぐことになる有名なイザベラ・デステがいます。 
     エルコレ1世は芸術の庇護者として名高く、フェッラーラ宮廷に多くのフランドル人音楽家を招聘しました。その中にジョスカンもいたのです。このミサ曲は、絵画において依頼者の貴族が聖人のモデルとして描かれるようなもので、すでに当代最高の音楽家として知られていたジョスカンから、自分の名前を織り込んだミサ曲を作ってもらえるなんて、実に名誉なことだったでしょう
     この手の込んだミサ曲をタリス・スコラーズは、ものの見事に歌い上げます。その調和、精度、完成度といったら!ジョスカンのミサ曲全曲録音の最終巻の録音に向けた彼らの気概が感じられる圧巻の歌唱となっています。

  • イタリアの実力派グループによる注目盤
    『ジョスカン・デ・プレ:スターバト・マーテル~マリア・モテットと器楽による歌曲集』

    ジュゼッペ・マレット指揮カンティカ・シンフォニア

    GLOSSA GCDP31909 輸入盤

    ジョスカンはミサ曲の他にも、数多くの作品を作っています。中でも、モテットと呼ばれるミサ曲と比べると小規模の教会音楽は、どれも美しい珠玉の作品群となっています。特に有名な「アヴェ・マリア」の美しさは、フラ・アンジェリコ(最近ではベアト・アンジェリコとも呼ばれますね)の静謐で美しい「受胎告知」と思わせます。完成されたルネサンス美の極致と呼ぶにふさわしい楽曲でしょう。
     こうしたジョスカンのモテットはその美しさからさまざまな録音で取り上げられていますが、ジョスカンイヤーにあわせて発売されたイタリアの気鋭のポリフォニー専門グループ、カンティカ・シンフォニアによる一枚は、これまでの録音と一線を画す大変興味深い内容になっています。この演奏は、ブルゴーニュのフィリップ美公に贈ったとされる名作「スターバト・マーテル」を中心に、ジョスカンのモテットと世俗曲が収録されていますが、曲によって編成を変え、声楽だけのアカペラで歌ったり、器楽だけで奏でたり、声楽器楽の混合で演奏したりと、さまざまな試みがなされています。ジョスカンらルネサンスのモテットは、アカペラで歌うことが一般的でしたが、最近では当時の演奏を考慮し、楽器を加えることも出てきました。このCDはそうした試みに本格的に取り組んだ録音となっているのです。歌手も古楽の第一線で活躍する実力派ばかりで、器楽陣も腕利き揃い。当時を思わせる響きを存分に楽しめる一枚となっています。ジョスカン演奏の新しいスタンダードになるかもしれません。

  • 器楽によるジョスカンの作品集
    『ジョスカン・デ・プレ:器楽作品集』

    アンサンブル・レオネス

    CHRISTOPHORUS CHR77348 輸入盤

    ジョスカンやその同時代人の作曲家の器楽作品を集め、またジョスカンの世俗音楽を器楽で演奏した興味深い企画の一枚です。ヴァイオリン、ヴィオラ・ダルコ、ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ、コルネット、ハープ、リュート、ギターなどで奏でられるその演奏は雰囲気満点。一部に加わるバリトンの歌声も良い具合に盛り上げます。作品の中には、ジョスカン自身のミサ曲の基になった「ビスケーの娘」「絶望的な運命の女神」「戦士(武装した人)」なども含まれているので、ミサ曲のお供にも役立ちます。演奏も雰囲気あふれるもので、ジョスカンの時代の器楽合奏を想像させてくれるものです。

  • 変幻自在の歌唱力で聴くジョスカンの世俗歌曲
    『ジョスカン・デ・プレの世俗歌曲さまざま~ティルマン・スザート1545年刊行の「第7歌曲集」より』

    クレマン・ジャヌカン・アンサンブル

    RICERCAR NYCX10184 輸入盤国内仕様日本語解説付き

    ジョスカンはミサ曲やモテットといった教会音楽だけでなく、数多くの世俗作品も残しました。どうしても教会音楽の影に隠れがちになってしまいますが、ジョスカンの世俗作品の中にも傑作は多く、後世への影響も大きなものがありました。このアルバムはそうした世俗歌曲を集めたアルバムで、輸入盤だけでなく、日本語解説・歌詞対訳付きの国内仕様盤も発売されました。現在、ジョスカンの世俗作品の日本語解説付きの現役盤がなかっただけに、これだけでも大変貴重なリリースとなりますが、このCDのパフォーマンスのすばらしさがその貴重さをもっともっと価値あるものにしています。ルネサンスのシャンソンやマドリガーレ演奏で30年以上古楽界をリードするクレマン・ジャヌカン・アンサンブルが変幻自在の歌唱力で、ジョスカンの多彩な世俗歌曲の世界を堪能させてくれるのです。特にリーダーのドミニク・ヴィスの衰え知らずの独特な美声と歌唱力、表現力には舌を巻きます。声に重ねられるリュートやヴァージナル、ポジティフ・オルガンも絶妙な味付けです。ジョスカンの死後、「皇帝の歌」としても知られることになる「千々の悲しみ」の器楽版や、ジョスカンに捧げられたゴンベールやフィンデルスの作品も収録。ジョスカンの世俗作品の粋を網羅した内容となっています。最新の知見を含む解説と歌詞対訳を読みながら、このCDを聴けば、ジョスカン作品への理解も深まります。特に歌詞がどのように表現されているかを聴きこんでみるとジョスカンの作曲技法のすごさが分かるはず。なんとも魅力的なジョスカンの世俗音楽の世界にようこそ!

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