銀座本店

TOPICS

クラシックスタッフが選ぶ“バッハ その新録音から”

銀座本店 クラシックフロア スタッフが選んだ“バッハ その新録音から”(2020/5/6掲載)
 
クラシック音楽の全作曲家の中で、最もCD発売点数が多い、ヨハン・セバスティアン・バッハ。続々と発売されるバッハ録音の中から、スタッフの一推しディスクをご紹介していきます。バッハ演奏の最前線となる録音の数々にぜひご注目ください!

 

  • 「マタイ受難曲」を愛するマクラウドの満を持しての録音!
    『J.S.バッハ:マタイ受難曲』

    ステファン・マクラウド指揮リ・アンジェリ・ジュネーヴ
    ヴェルナー・ギュラ(エヴァンゲリスト)ブノワ・アルノー(イエス)他
    CLAVES 50-3012(2枚組) 輸入盤

    数々の演奏や録音でイエス役を歌い、現代最高のイエス役歌手である古楽系バス、ステファン・マクラウドが信頼する仲間たちと心から愛するマタイ受難曲を録音。録音スタジオに円を描くように独唱者、合唱団、オーケストラを配置。考え抜かれた音響で録音に臨んでいる(ドイツの有名な録音チーム、トリトヌスによる収録)。それにしてもこれはなんとあたたかで愛に満ちた演奏だろうか。現代最高のエヴァンゲリストの一人であるギュラはこれまでも多くの指揮者と同曲を録音しているが、これがベストではないだろうか。感傷的になり過ぎず、かと言って冷徹にもならず、絶妙な距離感で音楽と聴きて手の間に立ち、繋いでいく。アルノーのイエスは個性的な性質ながら、マタイ受難曲のイエス像にあった人間としてのイエスの苦悩と超越者としての神の威厳を両立させる卓越した歌唱を聴かせる。コラール歌唱の充実度、合唱団の圧倒的表現力、そしてこれらを俯瞰しながらも随所できちんと寄り添い、まとめ上げるマクラウドの指揮ぶり(ちなみに歌手としてのマクラウドは第56曲「来たれ、甘き十字架よ」で歴史的名歌唱を聴かせてくれている)。マタイ受難曲録音史上、最も作品愛に満ちた録音と言えるのではないだろうか。1曲1曲噛み締めながら聴いて欲しい真の傑作録音だ。(須田)

  • 才人ラーデマンが第4稿を使用して「ヨハネ受難曲」を録音!
    『J.S.バッハ:ヨハネ受難曲』(第4稿 1749年)

    ハンス=クリストフ・ラーデマン指揮ゲッヒンガー・カントライ
    CARUS 83.313(2CD) 輸入盤

    バッハ演奏の権威リリングを引継ぎゲッヒンゲン聖歌隊の音楽監督に就任し、古楽器を導入し、合唱団の精度も高め、全く新たな団体へと昇華させた現代合唱界の雄、ラーデマンによるヨハネ受難曲。近年評価されている第4稿での録音だ。1749年の演奏時の状況によって一部アリアの歌詞の変更、コントラファゴット、チェンバロの導入などの楽器編成の変更などが加えられている最も劇的と呼ばれる稿である。ラーデマンはヨハネ受難曲の内在する劇性を重要視、冒頭から張り詰めた空気を感じさせ、イエスが暴走した群衆によって無実の罪で死刑に処される物語を丹念に紡いでいく。特に合唱の強烈なまでの表現力は驚異的で、クライマックスの裁きの場面での狂気に満ちた群衆の叫びを表した合唱は恐ろしいくらいだ。2016年の国際バッハ・コンクールで優勝した若き実力派テノール、パトリック・グラールのエヴァンゲリストは感情のバランスを心得た語り口で、好感が持てる。大ベテラン、ピーター・ハーヴェイのイエスは威厳に満ちたさすがの歌唱。ヨハネ受難曲のイエス像にぴったりだ。器楽陣にも声楽と同様のアーティキュレーションを徹底させるラーデマンの指揮ぶりもすばらしい。イエス磔刑への物語を圧倒的密度による演奏で聴ける名盤だ。(須田)

  • 2台のチェンバロと弦楽合奏が奏でる圧倒的な響き!
    『J.S.バッハ:2台のチェンバロのため協奏曲集』

    オリヴィエ・フォルタン(チェンバロ)
    エマニュエル・フランケンベルフ(チェンバロ)
    アンサンブル・マスク
    ALPHA NYCX10121 輸入盤国内仕様

    カナダの古楽界のトップランナーであるオリヴィエ・フォルタンとその仲間たちから成るアンサンブル・マスクによるバッハの2台のチェンバロのための協奏曲集。聴き始めるとすぐにはっとするほどの高音質に耳を奪われる。チェンバロの鮮やか音色とガット弦のオーガニックなサウンドがマッチし、清新な響きがこだまする。各パート一人の奏者による最小編成にもかかわらず、この優秀録音の成果で迫力満点。まるで自分が演奏者に混じっているかのような体験ができる。もちろん演奏もすばらしい。自由闊達なアンサンブルと最小編成ならではの親密さ。バッハがカフェでのコンサートや貴族のサロンで息子や弟子たちと一緒に楽しんで弾いていたであろうこれらの協奏曲の魅力を余すところなく伝えてくれる。またカップリングにはオルガン独奏のための前奏曲とフーガBWV552の2台チェンバロ版を収録。2台のチェンバロはオルガン演奏ではなかなか聴こえてこない内声部の複雑さを浮かび上がらせる。全くバッハの作品はどのようなアレンジをしても新しい発見があるのだから懐が深い。気鋭のバッハ研究者による最新の知見に基づく解説も読み応えあり。日本語解説には詳細な註釈も付いているので、あわせて読めば曲の理解がより深まる。バッハ演奏の最前線が聴ける一枚だ。(須田)

  • 天才アラールによるバッハの鍵盤作品全集第3弾!
    『J.S.バッハ:鍵盤作品全集VOL.3~フランス風に』

    バンジャマン・アラール(チェンバロ&オルガン)
    harmonia mundi HMM902457(3枚組)

    世界中で大絶賛されている気鋭の鍵盤奏者バンジャマン・アラールによるバッハの鍵盤作品全集の第3巻。毎回テーマを決め、バッハの作品をチョイス。しかも収録したバッハの作品と関連性の高い同時代の別の作曲家の作品も併せて収録しているというこだわりのシリーズだ。今回のテーマは「フランス風に」。CD1は表題タイトル通りで、バッハがその作品を研究していたフフランス・バロックの巨匠ランソワ・クープランの作品を間に挟みながら、その影響の強いチェンバロ作品を収録。フランス風序曲ではじまるBWV820、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための鍵盤小品集からの3つのメヌエットなど、まさにフランス風のチェンバロ音楽を、フランスの古城アッサ城に所有されている歴史的チェンバロで演奏。バッハのフランスからの影響をまとめて知ることができる。CD2は「いと高きところには神にのみ栄光あれ」をテーマにオルガン作品を収録。クープランを作品によりアリアや他のフランス・バロックのオルガン曲も交えながら、テーマのコラールに基づく作品をまとめて収録。同じコラールを使いながら、和声や展開の変化でどのように作品が個性化しているのかを音で理解できる。フランスの教会にある1710年製のジルバーマンオルガンを使用。CD末のパッサカリアBWV582は圧巻だ。CD3は「舞曲による組曲」がテーマ。イギリス組曲の第2&4番、リュートチェンバロのための組曲を収録。イギリスと付いているものの、実はバッハが付けた訳ではないイギリス組曲は、冒頭に大規模なプレリュードが置かれるフランス様式の舞曲集で、アラールはジャーマンタイプのチェンバロで迫力ある演奏を聴かせてくれる。それにしても舞曲の個性の描き分け方は天才的だ。3枚通してバッハが如何にフランス音楽を取り入れ、その要素を自分の音楽へと昇華していったかがよく分かる内容となっている。アラールのすばらしい演奏でバッハ理解が大いに深まる録音だ。続巻も楽しみすぎる!(須田)

  • 山野楽器オリジナル仕様!チェンバロ協奏曲の隠れた超名盤!
    『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲集』

    コンソルティウム・ヤゲロニクム

    DUX DUX0266Y 輸入盤国内仕様日本語解説付き(山野楽器オリジナル仕様)

    山野楽器がオリジナル日本語解説を付け、国内仕様盤として発売している限定盤。録音自体は1990年代後半であるが、日本に紹介されるのはほぼ初である。日本ではほとんど知られていないポーランドの老舗古楽グループ、コンソルティウム・ヤゲロニクムによる演奏。コンソルティウム・ヤゲロニクムはヤゲヴォ大学の関係者から成るピリオド楽器グループで、演奏家の国際的な知名度は高くないものの、その実力は驚くべきもの。このアルバムを聴けば、その高い能力を理解していただけるだろう。バッハのチェンバロ協奏曲の中から1〜4台まで各1曲バランスよく収録しているプログラム。ソリストによる優れた独奏は即興要素満載で、そのセンスも抜群。弦楽合奏も歯切れよく、よく統一されており、テンポ設定も絶妙だ。特にポーランドが生んだ偉大なるショパン弾き、ハリーナ・チェルニー=ステファンスカの愛娘エリザベート・ステファンスカ独奏による第1番の演奏は、数あるバッハのチェンバロ協奏曲録音の中でも屈指のすばらしさだろう。発売からご好評で、売切れ間近なので、ご興味がある方はぜひお早めにお求めを!(須田)

  • 若き名手コルティによる待望のチェンバロ協奏曲録音!
    『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲集』

    フランチェスコ・コルティ(チェンバロ)イル・ポモ・ドーロ

    PENTATONE PTC5186837 輸入盤

    2006年第15回国際ヨハン・セバスティアン・バッハ・コンクールのチェンバロ部門で第一位を獲得し、2007年からはミンコフスキに招かれて、ルーヴル宮音楽隊に参加、現在ソリストとしても通奏低音奏者としても大活躍中のチェンバロ奏者フランチェスコ・コルティが、ゲスト・コンダクターを務める気鋭のピリオド楽器グループ、イル・ポモ・ドーロとバッハのチェンバロ協奏曲集を録音。この演奏の特徴はなんと言っても圧倒的推進力にある。かなり早めのテンポ設定がなされ、チェンバロと弦楽合奏のスリリングな掛け合いは聴き手をグイグイと演奏に引き込んでしまう。有名な第1番の冒頭からそのスリリングさは満点で、小編成ながら低音強めの密度の濃い弦楽合奏の重厚な響きに驚かされる。早めのテンポ設定の演奏ではどうしても淡白になりがちだが、この弦楽合奏の濃い響きが淡白さを排除し、超絶テクニックで即興的装飾を入れまくるコルティの雄弁すぎるほどの独奏が、さらに密度を高める。緩やかな第2楽章での間の取り方も絶妙。体感的要素と知的遊戯が高次元で融合した新時代の名演と言えるだろう。ペンタトーンによる録音も超優秀でこの演奏の颯爽としたカッコよさを強調している。バッハ演奏の最前線を良い音で楽しんで欲しい。(須田)

  • 知られざる超名盤!鬼才モニゲッティによる無伴奏チェロ組曲!
    『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)』

    イヴァン・モニゲッティ(バロック・チェロ)

    DUX0301/0302(2枚組) 輸入盤

    ポーランドのトップクラシックレーベルDUXから発売されているアルバム。日本ではほとんど輸入されて来なかったこのアルバムを山野楽器が輸入代理店を通して、レーベル在庫をすべて確保し、限定販売中。イヴァン・モニゲッティはロシア出身のチェリストで、ロストロポーヴィチ最後の愛弟子として知られている実力派である。モダン、ピリオドどちらのチェロも弾きこなし、さまざまなスタイルで高次元の演奏が可能なヴァーサタイルなチェリストである。バロック・チェロを用いたこのバッハ無伴奏チェロ組曲は、1990年代の録音。彼は6曲のこの組曲を聖書の各場面と関連付け、それらを参考にしながら解釈をしていく。例えば、第1番は受胎告知と関連付けられ、冒頭のプレリュードは告知の天使ガブリエルの翼のはためきをイメージしているという。こうした画期的で驚くべき解釈は難解ではあり、かつテクニックも圧倒的なのだが、モニゲッティはその解釈やテクニックをひけらかすことなく、あくまで自然体であることを崩さない。モニゲッティがバッハの音楽と真摯に向き合い紡ぎ出された音楽は、聴き手の心の中へと、実にスムーズかつストレートに吸い込まれていく。その心地よさと納得度、満足度は、数多く名演の中でも出色ものだろう。個性的な解釈なのに、普遍性を持ち、人の心にすっと入ってくる。何度聴いても聴き飽きず、新鮮さを失わない。そしていつでも聴き手の側に寄り添ってくれる。ぜひご家庭にひとつは置いてほしい最高のバッハアルバムだ。数に限りがあるのでお求めはお早めにどうぞ。(須田)

  • バッハの隠れた名品に光を当てる圧倒的名演!
    『J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集』

    ラ・ディヴィナ・アルモニア
    平崎真弓(ヴァイオリン)アンナ・カンポリーニ(チェロ)ロレンツォ・ギエルミ(チェンバロ)

    Passacaille PAS1077 輸入盤

    バッハのヴァイオリン・ソナタといえば、「ヴァイオリンとオブリガード・チェンバロにための6つのソナタBWV1014-1019」が有名だが、それとは異なる「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」とされる作品を集めたアルバム。作曲年代もバラバラで、作品としてまとめられているわけではないので、どうしても知名度が劣ってしまう。しかも一部は研究者からは偽作とされており演奏機会も減ってしまっている。しかし曲想も多彩でバッハの作曲の技法の実験や変遷も分かり、大変興味深い内容なのだ。ここでは、イタリアの鬼才ロレンツォ・ギエルミと、ヨーロッパの古楽シーンの最前線で大活躍中の平崎真弓、若き実力派チェリスト、アンナ・カンポリーニがすばらしい演奏で、この比較的知名度の低いバッハの作品の面白さを教えてくれる。例えば、BWV1023は、通奏低音の保続音(オルゲルプンクト、同じ音または和音を持続させること)の上で、ヴァイオリンが華麗な技巧を聴かせる印象的な冒頭を持つ。インパクトは絶大だ。BWV1022は、バッハの指導の下、弟子または息子が作曲した作品と見られている。バッハによる作曲実践指導の成果とも考えられる興味深い作品だ。またこのアルバムにはチェンバロ独奏曲も併録されているが、これも無伴奏ヴァイオリン・ソナタと関わりのある作品であり、バッハのヴァイオリン作品とのつながりを考慮した凝ったプログラムとなっている。ギエルミによるこうしたプログラムの妙も聴きどころだ。圧倒的な技巧を聴かせるヴァイオリンとチェンバロもすばらしいが、はっきりと主張するチェロもまたすばらしい。「痒いところに手が届く」バッハ・アルバムだと言えるだろう。(須田)

※掲載商品のお問い合わせ、ご注文は、本店CD/映像フロアまで TEL 03-3562-5051(代表)