銀座本店

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今月の必聴傾聴盤

銀座本店 クラシックフロア スタッフが選んだ“今月の必聴傾聴盤”(201/2/10更新)
 
ディヌ・リパッティの「最後のリサイタル」が新音源でよみがえる!
 
『ブザンソンでの最後のリサイタル』

ディヌ・リパッティ(ピアノ)

【SOLSTICE】 SOCD358 輸入盤 

 33歳の若さでこの世を去った不世出の天才ピアニスト、ディヌ・リパッティのブザンソンでの最後のリサイタルは、半世紀以上を経た現在でも感動的な記録として全く色褪せていない。今回登場したのは、このリサイタルの新音源である。フランス視聴覚研究所(INA)から新しく発見されたこの音源は、これまでは含まれていなかった演奏前の指ならし、アナウンスなどを収録。このリサイタルの復刻史上、最も長い収録時間となっている。音質も非常に良く、リサイタルのライブ感が増しており、より身近に感じることができるだろう。演奏前に弾く指ならしからして極めて美しく、これを聴くだけでも価値はあるが、改めてリサイタル全体を聴いてみると、生き生きとした表現力、抜群のテクニック、そして天上の音色に、思わずのめり込んでしまうこと請け合い。バッハにしても、モーツァルトにしても、シューベルトにしても、そしてショパンにしても、演奏様式などというカテゴリーではとても括りきれない普遍性を持っている。悲壮感など皆無であり、ただただ純粋に音楽に尽くすこの演奏は、死を目前としたピアニストによるものとはとても思えない。やはりリパッティは不世出、別格のピアニストであったことを改めて思い知る。またブックレットには、リサイタル時の写真や夫人やコルトーとの写真、リパッティ自筆の手紙の画像などを収録。資料的価値も高く、なによりジャケット写真がカッコイイ!このリサイタルは、これまでに何度も復刻されているので、お持ちの方も多いと思うが、そうであってもこの新音源は、絶対に手元に置いて聴くことをオススメする。不世出の天才ピアニスト、リパッティが最後に残したあまりにも感動的な記録を、この新音源で改めて堪能して欲しい。(須田)
 

  • 初期バロック 女性画家が活躍した時代の音楽


    『喪失の嘆き~アルテミジア・ジェンティレスキとその時代の音楽』

    シルヴィア・フリガート(ソプラノ)

    アレッサンドラ・ロッシ・リューリヒ(指揮&チェンバロ)アッカデミア・ダルカディア

    【DYNAMIC】 CDS7829 輸入盤

    初期バロック時代のイタリアの女流画家アルテミジア・ジェンティレスキと彼女が活躍した時代の音楽を集めた企画盤。アルテミジア・ジェンティレスキは、あのカラヴァッジョの友人で優れた画家のオラツィオ・ジェンティレスキを父親に持ち、父親同様カラヴァッジョの強い影響を受けて作品を描き、当時としては珍しい女流画家として高い名声を得ていた。師であったアゴスティーノ・タッシに性的暴行を受け、裁判となり、その裁判でも過酷な取り調べを受けるなど波乱の人生を送ったことでも知られ、ジェンダー研究が進んだ現在では再評価著しい画家の一人となっている。アルテミジアは、カラヴァッジョの明暗の強い劇的な表現を受け継いた画風が特徴で、時にカラヴァッジョ本人を思わせるような強烈な表現さえ見せる。特に、「ホロフェルネスの首を斬るユディット」の表現は凄惨でさえあり、蔑むようにホロフェルネスを見るユディットの表情は、アルテミジアの男性全体に対する嫌悪感ととらえられている。さて、このCDのジャケットとして使われている絵画は、「リュート奏者としての自画像」である。アルテミジアの高い技術と芸術性、そして画家としての矜持を知るには最適な選択だろう。肝心のCDの内容であるが、アルテミジアが生きた時代のイタリアの音楽が集められているが、モンテヴェルディの「もし苦しみが甘美なものであるならば」から始まるそのプログラムは基本的に女性目線で書かれた歌詞を持つ作品が中心。子守歌による宗教的カンツォネッタ「さあ、お眠りなさい」、通称「聖母マリアの子守歌」(トラック5)と呼ばれるメールラの作品は、とても子守歌とは思えない暗さ(低音で同じ音を繰り返す反復音型は揺れる「ゆりかご」を表現しているがこれが実に不穏!)を持つ作品であるが、それは、人類の罪を被って十字架につけられる我が子イエスの過酷な運命を、知ってしまっているマリアの嘆きの歌ゆえ。女性作曲家バルバラ・ストロッツィの「恋するヘラクレイトス」(トラック8)は、音の大胆な跳躍を使った女性ならではの情念表現がすごい。同時代の女性芸術家の作品として、アルテミジアの絵画と呼応するものがあるだろう。歌手のシルヴィア・フリガートは、バロック唱法を得意する実力派で、ストレートで伸びやかな声と濃密な表現力を両立させた見事な歌唱を聴かせてくれる。ブックレットにはアルテミジアの絵画の一部も掲載されている。ぜひCDを聴くときにはアルテミジアの絵画を見ながら聴いてみてほしい。17世紀イタリアにおける女性と女性芸術家の素晴らしさを堪能できるはずだ。(須田)

  • アダム・ヴィクトラと気鋭のピリオド楽器アンサンブルによるゼレンカ・シリーズ最新作

    『別々な機会に書かれたさまざまな詩篇集』

    アダム・ヴィクトラ指揮アンサンブル・イネーガル、プラハ・バロック・ソロイスツ

    【NIBIRU】 NIBIRU0165 輸入盤

    ゼレンカ作品の伝道師であるチェコの気鋭の指揮者アダム・ヴィクトラとそのグループによるゼレンカ・シリーズ最新作。3つのアルバムにおよぶ「晩課の詩篇集」に続く、詩篇集の最終巻となるこのアルバムは、さまざまな機会において個別に書かれた詩篇を集めた曲集の完全録音。世界初録音曲も含んでいる(ちなみにこの詩篇シリーズ4巻はすべてジャケット画をミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の絵画で統一している)。比較的短い作品ばかりだが、曲集を聴いていけば、ゼレンカは曲の規模で手を抜くことなどないのが良く分かる。どれも小粒ながら濃密にまとめられた作品なのだ。アダム・ヴィクトラとそのアンサンブルによる演奏は、これまで同様、すばらしく、このグループが合唱もオーケストラも世界最高峰の実力を有していることを改めて感じさせてくれるものだ。また今回は、カウンターテナーにソロ・アルバムも多数発表している実力派フィリッポ・ミネッチャが参加。随所にその実力を発揮してくれている。ヴィクトラによるゼレンカ録音シリーズは、作品と演奏をあわせて、ゼレンカがバッハやヘンデル、ヴィヴァルディといったバロックのスター作曲家に比肩する大作曲家だったということを改めて知ることのできるシリーズなので、ぜひまとめて聴いていただきたい。(須田)

  • ヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバをフィーチャーしたバロック器楽作品集

    『マレ・ミーツ・コレッリ』

    ヤコブ・ラッティンガー(ヴィオラ・ダ・ガンバ)リナ・トゥール・ボネト(ヴァイオリン)

    アンサンブル・ムジカ・ナランス

    【PAN CLASSICS】 PC10395 輸入盤

    「フランスのヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の名手であったマラン・マレが、イタリアの希代の名ヴァイオリン奏者のアルカンジェロ・コレッリが、もしも出会ったら」というコンセプトでプログラムされた興味深い一枚。ヴィオールの曲、ヴァイオリンの曲、そして2つの楽器が共演する曲で構成されており、最後に二人がともに作った「ラ・フォリア」を基にした即興演奏で締めくくる。マレ役を担当するドイツの気鋭のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者ラッティンガーは、「天使」と呼ばれたマレを思わせるような優美な演奏を披露するかと思いきや、切れ味鋭い主張の激しい演奏を聴かせてくれていて面白い。マレの作品の演奏でもフランス的な優美さよりも曲の奥深くからえぐり出してきたほの暗さを押し出している。2018年には来日も果たし、絶賛されたスペインのヴァイオリニスト、ボネトは、的確なテクニックと颯爽とした表現力が魅力で、コレッリのヴァイオリン・ソナタも即興性を織り交ぜた鮮烈な演奏で聴かせてくれる。また二人が共演するマレの名作「パリ、サント・ジュヌヴィエーヴ・デュ・モン教会の鐘」では、鐘を模倣する3音の繰り返しが続く中、丁丁発止のやりとりが聴きものだ。そしてなんといっても最後に収録されている「フォリア」では、マレの「スペインのフォリア」とコレッリの「ラ・フォリア」を融合させ、即興を入れながら演奏するという大胆な試みが成されている。これがとてもエキサイティングで聴いていて高揚すること必至。まさに「熱狂」を意味する「フォリア」のごとしである。加えて、2人を支える通奏低音陣(バロック・ギター、テオルボ、チェンバロ)も名手ぞろいで、決して「伴奏」に終わらず、時に主役をもぎ取ろうとするかのように激しく主張する。マレとコレッリが出会ったらというフィクションを現実にして聴かせてくれるまたとない一枚。(須田)

  • 共鳴弦付きの弦楽器が奏でる天上の音楽

    『愛の協奏曲~バロック時代の協奏曲とソナタ集』

    フィリップ・フロン(パルドゥシュ・ド・ヴィオール・ダムール、ヴィオロンセル・ダムール)

    ジャン=ピエール・ヌオー(ヴィオロンセル・ダムール)マリー・ヌオー(ヴィオロン・ダムール)

    ウィリアム・ワテルス(テオルボ)

    【CONTINUO CLASSICS】 CC777.811  輸入盤

    「愛の」(ダムール、またはダモーレ)と名前の後に付けられている共鳴弦付きの弦楽器を用いたフランス・バロックの器楽作品集。「愛の」楽器は、弓で弾くガット弦の他に、共鳴させるためだけに用いられる金属の弦が張られているのが特徴。パルドゥシュ・ド・ヴィオール・ダムールは、高音を担当するヴィオラ・ダ・ガンバ族の楽器。ヴァイオリンと同じくらいの大きさだが、ヴィオラ・ダ・ガンバ族なので、足に挟んで奏でる。ヴィオロンセル・ダムールはチェロ・ダモーレとも言い、チェロに共鳴弦が張られている楽器で、「ヴィオロンチェロ・アッリングレーズ」(イギリス式のチェロ)という名前でイタリアでも用いられていたことがあり、ヴィヴァルディがこの楽器を主役とした協奏曲を書いている。ヴィオロン・ダムールは「ダムール」版ヴィオローネ(最低音部を奏でるベース楽器)。これらの楽器は、共鳴弦が張ってあることにより、倍音が豊かで、まるでヴェールのかかったような柔らかな響きが特徴。「愛の」という言葉が付けられただけのことはあるロマンティックな響きだ。このアルバムでは、これらの楽器の合奏となっているので、まさに「天使の奏楽」とでも形容できるような美しい響きを聴くことができる。演奏者のフィリップ・フロンはこうした特殊なヴィオールやバロック・チェロなどの低音弦楽器のスペシャリスト。さすがの技術と音楽性でフランス・バロックの優美な作品を奏でる。倍音が響き渡るその演奏は、通常のヴィオールやバロック・チェロで弾いた演奏とはかなり異なる雰囲気を醸し出している。さながらフラゴナールやワトーの絵画が代表するロココ芸術のように華麗である。ブックレットには使用楽器の写真も載っている。華やかなりしフランスを思い起こさせる一枚だ。(須田)

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