銀座本店

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今月の必聴傾聴盤

銀座本店 クラシックフロア スタッフが選んだ “今月の必聴傾聴盤” (2019/1/9更新)

実力派歌手が集結したド・ラ・リューのミサ曲集
 
『ピエール・ド・ラ・リュー:ミサ曲集』
ザ・サウンド・アンド・ザ・フューリー
【fra bernardo】 fb1810455(2CD) 輸入盤

2018年で没後500年を迎えたルネサンス時代フランドル楽派の巨匠ピエール・ド・ラ・リューのミサ曲集。ヒリヤード・アンサンブルで活躍したベテラン歌手、ジョン・ポッターを中心にヨーロッパ各地から集った実力派歌手たちによる声楽アンサンブル、“ザ・サウンド・アンド・ザ・フューリー”による2013年録音。彼らはORFレーベルにド・ラ・リューのミサ曲集を1枚録音していたが、これはおそらくその続編として録音されながら、発売されていなかったものと思われる。没後500年となる2018年になって、やっと日の目を見たのだろう。その内容はルネサンス・ポリフォニー歌唱の最高峰を示すものだ。代表作である「死者のためのミサ曲(レクイエム)」や、当時の名立たる作曲家がこぞって素材とした、流行俗謡「ロム・アルメ(武装した人)」を基にしたミサ曲「ミサ・ロム・アルメ」など、傑作4曲が聴ける。超高密度のポリフォニー歌唱は聴いていると古いヨーロッパの修道院にいるかのような錯覚にとらわれるほど雰囲気満点(ちなみに録音場所は世界遺産にもなっているマウルブロン修道院)。デュファイやジョスカン・デ・プレらフランドル楽派の他の有名人と比べて、決して録音の多くないド・ラ・リューであるが、この録音をきっかけにぜひもっとメジャーな存在になって欲しい。ルネサンス音楽ファンは必聴だ。(須田)
 

  • ベルニウスのゼレンカ録音最新作!

    『ゼレンカ:聖ヨセフのミサ、深き淵より、イスラエルより出でて』

    フリーダー・ベルニウス指揮シュトゥットガルト室内合唱団、シュトゥットガルト・バロックオーケストラ

    【CARUS】 83.279 輸入盤

    “合唱界の生ける伝説”フリーダー・ベルニウスが長年、その再評価のために力を注ぐボヘミア・バロックの巨匠ゼレンカ。ドレスデン宮廷で活躍したゼレンカは、近年の研究によって、バッハやヘンデルといった同時代の作曲家に多大な影響を与えたことが分かってきている。それほど重要な作曲家でありながら、地元のチェコ以外ではあまり取り上げられてこなかったゼレンカの作品をいち早く取り上げ、その作品の素晴らしさを世に知らしめてきたのがベルニウスなのである。ベルニウスによるゼレンカ録音の最新作となるこのアルバムには、50代の円熟を迎えたゼレンカが書いたミサ曲「聖ヨセフのミサ」と2つの詩篇「深き淵より」「イスラエルより出でて」を収録。1732年の聖ヨセフの祝日のために書かれ、ザクセン公女マリア・ヨゼファ(聖ヨセフから名前が取られている)の命名日にドレスデンで演奏されたという「聖ヨセフのミサ」は、穏やかな始まりと澄んだ明るさを持つ快活な「Kyrie」からはじまる。続く「Gloria」の華やかさはどこかヘンデルを思わせる。その後の「Et in Terra Pax」はバッハの曲を聴いているような濃密な雰囲気を宿し、「Pax(平和)」に不穏な和音があてがわれているところに驚かされる。しかし続く「Laudamus Te」では、ソプラノとカウンターテナーの二重唱が管楽器の印象的な旋律をバックにオペラティックに歌われる。その後の「Qui Tolis」ではまた濃密な和声が支配する…などなど、まさに千変万化、ゼレンカの面目躍如となるようなミサ曲である。詩篇「深き淵より」は、バス3人による三重唱からはじまるという衝撃的な奇作。まさにタイトル通り深き淵から呼びかけられているかのような怖さがある。しかも「clamavi(叫ぶ)」の部分で不協和音がこだまするようになっているのだから、良くできている。ここに活発に動き回る通奏低音がからんでくるので、余計不気味な印象を与えるのだ。この表現力恐るべし...。疾走感あふれる「イスラエルより出でて」も加えて、実に内容の濃いアルバムとなっている。もちろんそれは演奏のすばらしさもあってこそ。ベルニウスに鍛え抜かれたシュトゥットガルト室内合唱団の上手さはさることながら、優秀なソリスト、そして完成されたピリオド楽器オーケストラが、ゼレンカの素晴らしさを伝えてくれる。希有な才能をもったバロックの巨匠ゼレンカにご注目あれ!(須田)

  • 気鋭のピリオド楽器アンサンブルで活躍してきたベテランによるバッハの無伴奏!

    『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)』

    ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(ヴァイオリン)

    【APARTE】 AP176(2CD) 輸入盤

    ドイツの老舗ピリオド楽器オーケストラ、“フライブルク・バロックオーケストラ”のコンサートマスター、音楽監督として、長年ドイツにおけるピリオド楽器演奏をリードしてきたバロック・ヴァイオリン奏者ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ。ここ数年はソロ活動にも力を入れ、いくつかの録音も発表し始めている。そして今回ついに、バッハの無伴奏作品を録音した。数十年に渡って古楽演奏の第一線で活躍してきた彼のこと、その実力は折り紙つき。そんな彼の演奏の特徴を一言で表せば「平常心」である。彼はバッハの大曲を前にしても全く気負わない。実に自然体なのだ。きっと子供の頃から、バッハの作品をそれこそ数えきれないくらいに弾いてきたのだろう。ここには長年、バロックヴァイオリンで古楽を演奏してきた人物だけが得られる懐の深さがあるのだ。ここで聴くことのできる解釈は我々聴き手の中にすっと入りこんで来る。聴き終えた後に、「なるほどこういうことだったのか」と手を打つこと請け合いである。真摯にバッハと向き合ってきたゴルツの演奏は、バロック・ヴァイオリンによるバッハ演奏の1つの完成形と呼ぶにふさわしい。バロック・ヴァイオリンによる同曲の録音もずいぶんと増えてきているが、この演奏にもぜひ聴き入って欲しい。(須田)

  • ポルトガルの新鋭声楽アンサンブルが送るポルトガル・ルネサンスの巨匠の教会音楽集

    『マヌエル・カルドーゾ:レクイエム、哀歌、マニフィカトとモテット集』

    ルイス・トスカノ指揮クペルチノス

    【HYPERION】 CDA68252 輸入盤

    HYPERIONレーベルの看板グループの1つであるイギリスのポリフォニー・グループ、“ブラバント・アンサンブル”で活躍するルイス・トスカノが2009年に結成したポルトガルの若き声楽アンサンブル、“クペルチノス”によるHYPERIONデビュー盤。自国のルネサンス音楽に光を当てるために、積極的な活動をしているという。遠く日本にも戦国時代に来訪していたことでも知られるように、ポルトガルはスペインとともに早くからヨーロッパの外を目指した国。特に、カトリックの国である両国は、プロテスタントに対抗するため、キリスト教のアジア諸国への布教に心血を注いでいた国だった。日本にキリスト教を布教しに来たあのザビエルが所属していたイエズス会も、元々はスペインとポルトガル出身の聖職者たちによって結成されている。そうしたこともあって、スペインやポルトガルの教会音楽は、曲の構成や完成度といった知性的な側面以上に、聴き手の心に直接訴えかけるような感情的な側面を重視した作品が多いことが特徴である。より多くの信徒を獲得するため、より分かりやすく、感情移入しやすい音楽を作っていたのだ。ここに取り上げられているルネサンス時代のポルトガルの教会音楽の代表格であるカルドーゾの作品の数々も瑞々しい情感にあふれている。例えば、アルバムの中心を占める作品、死者のためのミサ曲(レクイエム)であるが、あのビクトリアの名作を彷彿とさせる名作である。カルドーゾはイギリスのアンサンブルが取り上げることが多かったが、この“クペルチノス”のようなポルトガルの優れたアンサンブルが登場し、こうして録音してくれることはうれしい限り。彼らはイギリスの声楽アンサンブルに習った精緻さを持ち、かつ非常にフレッシュなサウンドも兼ね備えている。ここで聴ける情感あふれる歌唱は、幼少期から地元の教会で自国の教会音楽を聴いてきた人たちだからこそ成し得るものだと思う。憂いと悲しみ、喜びに怒り。心を揺さぶるポルトガルのルネサンス音楽にぜひ耳を傾けてほしい。(須田)

  • フランスの名声楽アンサンブルによるジョスカンのミサ曲2編

    『ジョスカン・デ・プレ:ミサ「手に負えない運命の女神」、ミサ「ビスケーの娘」』

    ジュリエット・ド・マシー指揮ビスカントル!&メタモルフォーゼ声楽アンサンブル

    【AR RE-SE】AR2018-1  輸入盤

    フランスで30年以上に渡り、ルネサンスやバロックのポリフォニーを専門に活動してきた音楽学者で指揮者のモーリス・ブルボン率いる“アンサンブル・メタモルフォーゼ”と、ブルボンの弟子で、アシスタントとしても支えてきたというジュリエット・マシーが主宰する若い声楽アンサンブル、“ビスカントル!”のメンバーが集い録音したジョスカン・デ・プレのミサ曲2編。“メタモルフォーゼ”は、「フランス的」とも表現できる柔らかな発声と緩やかなアンサンブルで、ルネサンス・ポリフォニーに独自の表現を取り入れてきたグループで、“ビスカントル!”との共演となるこの録音でも同じスタンスでの歌唱を披露している。“タリス・スコラーズ”や“ザ・シックスティーン”のようなイギリス系の、きりりと引き締まった精緻な声楽アンサンブルとは明確に異なる個性による歌唱なので、ジョスカンの音楽世界もまた違って聴こえてくる。ずっと聴いていると、耳に心地よく、当時の歌唱もこうだったのではないか、と思えてくるから不思議だ。ジョスカンのミサ曲はどれも完成度が高く、かつさまざまなスタイルでの歌唱も受け入れてくれる懐の深さがあることを教えてくれる録音。“タリス・スコラーズ”も日本の“アンサンブル・ヴォーカル カペラ”も同じ曲を録音しているので、ぜひ聴き比べて、多様なジョスカンの世界に浸って欲しい。(須田)

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