銀座本店 4F クラシック

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クラシックスタッフが選ぶ“バッハ その新録音から”

銀座本店 クラシックフロア スタッフが選んだ“バッハ その新録音から”(2020/5/6掲載、2020/10/14更新)
 
クラシック音楽の全作曲家の中で、最もCD発売点数が多い、ヨハン・セバスティアン・バッハ。続々と発売されるバッハ録音の中から、スタッフの一推しディスクをご紹介していきます。バッハ演奏の最前線となる録音の数々にぜひご注目ください!

 

  • 「マタイ受難曲」を愛するマクラウドの満を持しての録音!
    『J.S.バッハ:マタイ受難曲』

    ステファン・マクラウド指揮リ・アンジェリ・ジュネーヴ
    ヴェルナー・ギュラ(エヴァンゲリスト)ブノワ・アルノー(イエス)他
    CLAVES 50-3012(2枚組) 輸入盤

    数々の演奏や録音でイエス役を歌い、現代最高のイエス役歌手である古楽系バス、ステファン・マクラウドが信頼する仲間たちと心から愛するマタイ受難曲を録音。録音スタジオに円を描くように独唱者、合唱団、オーケストラを配置。考え抜かれた音響で録音に臨んでいる(ドイツの有名な録音チーム、トリトヌスによる収録)。それにしてもこれはなんとあたたかで愛に満ちた演奏だろうか。現代最高のエヴァンゲリストの一人であるギュラはこれまでも多くの指揮者と同曲を録音しているが、これがベストではないだろうか。感傷的になり過ぎず、かと言って冷徹にもならず、絶妙な距離感で音楽と聴きて手の間に立ち、繋いでいく。アルノーのイエスは個性的な性質ながら、マタイ受難曲のイエス像にあった人間としてのイエスの苦悩と超越者としての神の威厳を両立させる卓越した歌唱を聴かせる。コラール歌唱の充実度、合唱団の圧倒的表現力、そしてこれらを俯瞰しながらも随所できちんと寄り添い、まとめ上げるマクラウドの指揮ぶり(ちなみに歌手としてのマクラウドは第56曲「来たれ、甘き十字架よ」で歴史的名歌唱を聴かせてくれている)。マタイ受難曲録音史上、最も作品愛に満ちた録音と言えるのではないだろうか。1曲1曲噛み締めながら聴いて欲しい真の傑作録音だ。(須田)

  • 才人ラーデマンが第4稿を使用して「ヨハネ受難曲」を録音!
    『J.S.バッハ:ヨハネ受難曲』(第4稿 1749年)

    ハンス=クリストフ・ラーデマン指揮ゲッヒンガー・カントライ
    CARUS 83.313(2CD) 輸入盤

    バッハ演奏の権威リリングを引継ぎゲッヒンゲン聖歌隊の音楽監督に就任し、古楽器を導入し、合唱団の精度も高め、全く新たな団体へと昇華させた現代合唱界の雄、ラーデマンによるヨハネ受難曲。近年評価されている第4稿での録音だ。1749年の演奏時の状況によって一部アリアの歌詞の変更、コントラファゴット、チェンバロの導入などの楽器編成の変更などが加えられている最も劇的と呼ばれる稿である。ラーデマンはヨハネ受難曲の内在する劇性を重要視、冒頭から張り詰めた空気を感じさせ、イエスが暴走した群衆によって無実の罪で死刑に処される物語を丹念に紡いでいく。特に合唱の強烈なまでの表現力は驚異的で、クライマックスの裁きの場面での狂気に満ちた群衆の叫びを表した合唱は恐ろしいくらいだ。2016年の国際バッハ・コンクールで優勝した若き実力派テノール、パトリック・グラールのエヴァンゲリストは感情のバランスを心得た語り口で、好感が持てる。大ベテラン、ピーター・ハーヴェイのイエスは威厳に満ちたさすがの歌唱。ヨハネ受難曲のイエス像にぴったりだ。器楽陣にも声楽と同様のアーティキュレーションを徹底させるラーデマンの指揮ぶりもすばらしい。イエス磔刑への物語を圧倒的密度による演奏で聴ける名盤だ。(須田)

  • 2台のチェンバロと弦楽合奏が奏でる圧倒的な響き!
    『J.S.バッハ:2台のチェンバロのため協奏曲集』

    オリヴィエ・フォルタン(チェンバロ)
    エマニュエル・フランケンベルフ(チェンバロ)
    アンサンブル・マスク
    ALPHA NYCX10121 輸入盤国内仕様

    カナダの古楽界のトップランナーであるオリヴィエ・フォルタンとその仲間たちから成るアンサンブル・マスクによるバッハの2台のチェンバロのための協奏曲集。聴き始めるとすぐにはっとするほどの高音質に耳を奪われる。チェンバロの鮮やか音色とガット弦のオーガニックなサウンドがマッチし、清新な響きがこだまする。各パート一人の奏者による最小編成にもかかわらず、この優秀録音の成果で迫力満点。まるで自分が演奏者に混じっているかのような体験ができる。もちろん演奏もすばらしい。自由闊達なアンサンブルと最小編成ならではの親密さ。バッハがカフェでのコンサートや貴族のサロンで息子や弟子たちと一緒に楽しんで弾いていたであろうこれらの協奏曲の魅力を余すところなく伝えてくれる。またカップリングにはオルガン独奏のための前奏曲とフーガBWV552の2台チェンバロ版を収録。2台のチェンバロはオルガン演奏ではなかなか聴こえてこない内声部の複雑さを浮かび上がらせる。全くバッハの作品はどのようなアレンジをしても新しい発見があるのだから懐が深い。気鋭のバッハ研究者による最新の知見に基づく解説も読み応えあり。日本語解説には詳細な註釈も付いているので、あわせて読めば曲の理解がより深まる。バッハ演奏の最前線が聴ける一枚だ。(須田)

  • 天才アラールによるバッハの鍵盤作品全集第3弾!
    『J.S.バッハ:鍵盤作品全集VOL.3~フランス風に』

    バンジャマン・アラール(チェンバロ&オルガン)
    harmonia mundi HMM902457(3枚組)

    世界中で大絶賛されている気鋭の鍵盤奏者バンジャマン・アラールによるバッハの鍵盤作品全集の第3巻。毎回テーマを決め、バッハの作品をチョイス。しかも収録したバッハの作品と関連性の高い同時代の別の作曲家の作品も併せて収録しているというこだわりのシリーズだ。今回のテーマは「フランス風に」。CD1は表題タイトル通りで、バッハがその作品を研究していたフフランス・バロックの巨匠ランソワ・クープランの作品を間に挟みながら、その影響の強いチェンバロ作品を収録。フランス風序曲ではじまるBWV820、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのための鍵盤小品集からの3つのメヌエットなど、まさにフランス風のチェンバロ音楽を、フランスの古城アッサ城に所有されている歴史的チェンバロで演奏。バッハのフランスからの影響をまとめて知ることができる。CD2は「いと高きところには神にのみ栄光あれ」をテーマにオルガン作品を収録。クープランを作品によりアリアや他のフランス・バロックのオルガン曲も交えながら、テーマのコラールに基づく作品をまとめて収録。同じコラールを使いながら、和声や展開の変化でどのように作品が個性化しているのかを音で理解できる。フランスの教会にある1710年製のジルバーマンオルガンを使用。CD末のパッサカリアBWV582は圧巻だ。CD3は「舞曲による組曲」がテーマ。イギリス組曲の第2&4番、リュートチェンバロのための組曲を収録。イギリスと付いているものの、実はバッハが付けた訳ではないイギリス組曲は、冒頭に大規模なプレリュードが置かれるフランス様式の舞曲集で、アラールはジャーマンタイプのチェンバロで迫力ある演奏を聴かせてくれる。それにしても舞曲の個性の描き分け方は天才的だ。3枚通してバッハが如何にフランス音楽を取り入れ、その要素を自分の音楽へと昇華していったかがよく分かる内容となっている。アラールのすばらしい演奏でバッハ理解が大いに深まる録音だ。続巻も楽しみすぎる!(須田)

  • 若き名手コルティによる待望のチェンバロ協奏曲録音!
    『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲集』

    フランチェスコ・コルティ(チェンバロ)イル・ポモ・ドーロ

    PENTATONE KKC6240  輸入盤国内仕様

    2006年第15回国際ヨハン・セバスティアン・バッハ・コンクールのチェンバロ部門で第一位を獲得し、2007年からはミンコフスキに招かれて、ルーヴル宮音楽隊に参加、現在ソリストとしても通奏低音奏者としても大活躍中のチェンバロ奏者フランチェスコ・コルティが、ゲスト・コンダクターを務める気鋭のピリオド楽器グループ、イル・ポモ・ドーロとバッハのチェンバロ協奏曲集を録音。この演奏の特徴はなんと言っても圧倒的推進力にある。かなり早めのテンポ設定がなされ、チェンバロと弦楽合奏のスリリングな掛け合いは聴き手をグイグイと演奏に引き込んでしまう。有名な第1番の冒頭からそのスリリングさは満点で、小編成ながら低音強めの密度の濃い弦楽合奏の重厚な響きに驚かされる。早めのテンポ設定の演奏ではどうしても淡白になりがちだが、この弦楽合奏の濃い響きが淡白さを排除し、超絶テクニックで即興的装飾を入れまくるコルティの雄弁すぎるほどの独奏が、さらに密度を高める。緩やかな第2楽章での間の取り方も絶妙。体感的要素と知的遊戯が高次元で融合した新時代の名演と言えるだろう。ペンタトーンによる録音も超優秀でこの演奏の颯爽としたカッコよさを強調している。バッハ演奏の最前線を良い音で楽しんで欲しい。日本語解説には演奏者による演奏に関する序文と詳細な解説の翻訳、日本語独自の解説付。読みごたえあり!(須田)

  • 知られざる超名盤!鬼才モニゲッティによる無伴奏チェロ組曲!
    『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)』

    イヴァン・モニゲッティ(バロック・チェロ)

    DUX0301/0302(2枚組) 輸入盤

    ポーランドのトップクラシックレーベルDUXから発売されているアルバム。日本ではほとんど輸入されて来なかったこのアルバムを山野楽器が輸入代理店を通して、レーベル在庫をすべて確保し、限定販売中。イヴァン・モニゲッティはロシア出身のチェリストで、ロストロポーヴィチ最後の愛弟子として知られている実力派である。モダン、ピリオドどちらのチェロも弾きこなし、さまざまなスタイルで高次元の演奏が可能なヴァーサタイルなチェリストである。バロック・チェロを用いたこのバッハ無伴奏チェロ組曲は、1990年代の録音。彼は6曲のこの組曲を聖書の各場面と関連付け、それらを参考にしながら解釈をしていく。例えば、第1番は受胎告知と関連付けられ、冒頭のプレリュードは告知の天使ガブリエルの翼のはためきをイメージしているという。こうした画期的で驚くべき解釈は難解ではあり、かつテクニックも圧倒的なのだが、モニゲッティはその解釈やテクニックをひけらかすことなく、あくまで自然体であることを崩さない。モニゲッティがバッハの音楽と真摯に向き合い紡ぎ出された音楽は、聴き手の心の中へと、実にスムーズかつストレートに吸い込まれていく。その心地よさと納得度、満足度は、数多く名演の中でも出色ものだろう。個性的な解釈なのに、普遍性を持ち、人の心にすっと入ってくる。何度聴いても聴き飽きず、新鮮さを失わない。そしていつでも聴き手の側に寄り添ってくれる。ぜひご家庭にひとつは置いてほしい最高のバッハアルバムだ。数に限りがあるのでお求めはお早めにどうぞ。(須田)

  • バッハの隠れた名品に光を当てる圧倒的名演!
    『J.S.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集』

    ラ・ディヴィナ・アルモニア
    平崎真弓(ヴァイオリン)アンナ・カンポリーニ(チェロ)ロレンツォ・ギエルミ(チェンバロ)

    Passacaille KKC6239 輸入盤国内仕様

    バッハのヴァイオリン・ソナタといえば、「ヴァイオリンとオブリガード・チェンバロにための6つのソナタBWV1014-1019」が有名だが、それとは異なる「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ」とされる作品を集めたアルバム。作曲年代もバラバラで、作品としてまとめられているわけではないので、どうしても知名度が劣ってしまう。しかも一部は研究者からは偽作とされており演奏機会も減ってしまっている。しかし曲想も多彩でバッハの作曲の技法の実験や変遷も分かり、大変興味深い内容なのだ。ここでは、イタリアの鬼才ロレンツォ・ギエルミと、ヨーロッパの古楽シーンの最前線で大活躍中の平崎真弓、若き実力派チェリスト、アンナ・カンポリーニがすばらしい演奏で、この比較的知名度の低いバッハの作品の面白さを教えてくれる。例えば、BWV1023は、通奏低音の保続音(オルゲルプンクト、同じ音または和音を持続させること)の上で、ヴァイオリンが華麗な技巧を聴かせる印象的な冒頭を持つ。インパクトは絶大だ。BWV1022は、バッハの指導の下、弟子または息子が作曲した作品と見られている。バッハによる作曲実践指導の成果とも考えられる興味深い作品だ。またこのアルバムにはチェンバロ独奏曲も併録されているが、これも無伴奏ヴァイオリン・ソナタと関わりのある作品であり、バッハのヴァイオリン作品とのつながりを考慮した凝ったプログラムとなっている。ギエルミによるこうしたプログラムの妙も聴きどころだ。圧倒的な技巧を聴かせるヴァイオリンとチェンバロもすばらしいが、はっきりと主張するチェロもまたすばらしい。「痒いところに手が届く」バッハ・アルバムだと言えるだろう。日本語解説には、ギエルミによる原文解説の翻訳と、演奏に関するコメント付き。ギエルミの解説も示唆に富んだもので、興味深い。(須田)

  • 大ベテランが円熟の技で聴かせる平均律のすごみ!
    『J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻』

    トレヴァー・ピノック(チェンバロ)

    ドイツ・グラモフォン UCCG (2枚組)国内盤

    古楽界の重鎮トレヴァー・ピノックが、なんとドイツ・グラモフォンから平均律クラヴィーア曲集第1巻を発売!ここ数年ではLINNレーベルでのソロ録音とモダン楽器のアンサンブルの指揮の録音などで、大レーベルでの録音から遠ざかっていたピノックだが、1980年代から1990年代にかけては、ARCHIVレーベルでバッハやヘンデルの合奏曲の体系的な録音を行い、今でも定評ある演奏として親しまれている。今回、突然のドイツ・グラモフォンでの録音となる平均律クラヴィーア曲集。「鍵盤音楽の旧約聖書」とも言われるこの曲集を衰え知らずの技術とベテランならではの円熟の技で演奏。バッハ音楽の深みを親しみやすく提示してくれるのは、ピノックだからこその至芸だろう。ピノックの過去の名盤とともに今後も聴き継がれて行くことになるだろう名演だ(須田)。

  • イタリアから生まれた画期的な「フーガの技法」録音
    『J.S.バッハ:フーガの技法』(ベルリン自筆稿)

    アルベルト・ラージ(ヴィオラ・ダ・ガンバ&指揮)
    アッカデミア・ストゥルメンターレ・イタリアーナ

    CHALLENGE CLASSICS KKC6275 輸入盤国内仕様

     アルベルト・ラージはイタリアのベテランのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者で、イタリアのSTRADIVARIUSなどにソロ録音や主宰するピリオド楽器アンサンブルやオーケストラの録音を残している。彼の演奏は、イタリアの演奏家に我々が抱く一般的なイメージとは異なり、派手さや明るさはない。しかし、確かな技術と深い楽譜の読みから来る解釈は、味わい深く、 まさにいぶし銀と呼ぶべき演奏を聴かせてくれている。日本での知名度は高くないが、私はことあるごとにラージの演奏をご紹介してきた。何度も聴くに値する深みがあるからだ。
     このアルバムは、ラージ30年以上前から率いているピリオド楽器グループの一つで、主にヴィオラ・ダ・ガンバの合奏を主とするアンサンブルによるバッハのフーガの技法である。一般的な出版譜ではなく、ベルリン自筆稿と呼ばれる楽譜を用いての演奏である。出版譜とベルリン自筆稿では、曲数や曲順、音楽そのものに相違点がある。なによりベルリン自筆稿の特徴と言えるのが、数字の象徴性である。例えば、タイトルの原題「Die Kunst der Fuga」は、最後のフーガだけをラテン語またはイタリア語にしている(ドイツ語ならばFuge)のだが、これはタイトルから158という数字を導き出すためである。アルファベットのaを1とし、zを24とし(iとj、uとvは同じとされてきた)、タイトルのアルファベットを数字化し、すべて足すと158になる。これは、JOHAN SEBASTIAN BACHを同様の手法で数字化し、合計した数と一致する。さらに、158を1+5+8=14とするとBACHの綴りのその数2+1+3+8=14と一致する。これを単なる数字遊びとしてしまえばそれまでだが、バッハはファミリーナンバーとも言える14を大事にしていたことは疑いようのない事実であるし、フーガの技法という自らこだわってきた対位法研究の集大成のような曲集にはふさわしいものだと言えるだろう。こんな数字の魔術がベルリン自筆稿には他にもたくさん隠されているのである。オルガン奏者としてこの録音に参加しているルカ・グリエルミによる詳細な解説(英語)がブックレットには記載されており、実にエキサイティングで示唆に富んだ内容である。輸入代理店にはぜひとも専門家にお願いして、注釈付きで翻訳していただきたい。⇒国内仕様でも発売に!詳細な注が付いた翻訳は読みごたえあり!ぜひ国内仕様でお求めあれ!
     さて、せっかくのこうした綿密な研究も演奏内容が伴わなければ、全く意味がない。そこが音楽の難しいところであるが、ラージたちの演奏は実に面白い。ラージはフーガの技法の録音に当たり、この曲集が鍵盤音楽であることを理解しながらも、ポリフォニーの練習曲的側面を考え、器楽によるポリフォニーが深められていったさまざまな楽器による16-17世紀のイタリアのカンツォンやリチェルカールの編成や、17世紀イタリアの貴族バルビリーニ家の宮廷で活躍したヴィオラ・ダ・ガンバ・コンソート、イギリス・バロックのブロークン・コンソート(同種の楽器の合奏であるホール・コンソートに対して、別の種類の楽器を用いての合奏スタイルのこと)、そしてブクステフーデ(若きバッハの憧れだった作曲家)らの北ドイツの器楽演奏スタイルというさまざまな器楽合奏の伝統を考慮し、ヴァイオリンを含んだヴィオラ・ダ・ガンバ・コンソートとオルガンという編成で臨んでいる。曲によって、編成を変え、多様な響きを生み出し、一つの曲集としてのまとまりも聴かせてくれる。研究と実践が高次元で融合した全く新しい「フーガの技法」録音と呼べるだろう。イタリアから生まれたバッハの新しい地平線。バッハ・ファンなら、ぜひ聴いておきたい。(須田)

  • ゴルトベルクの新たな形!
    『J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲』(弦楽四重奏&チェンバロ作品版)

    ニコラス・ロビンソン&エリーザ・チッテーリオ(ヴァイオリン)
    ジャンニ・マラルディ(ヴィオラ)
    ホルヘ・アルベルト・ゲレロ(チェロ)
    渡邊孝(チェンバロ)

    AMADEUS AM3182 輸入盤

     ゴルトベルク変奏曲はさまざまな編曲、アレンジがなされ、ほぼ編曲の実験場とさえ呼べるほどであるが、ここにまた新しい編曲が登場した。弦楽四重奏+チェンバロという編成である。シトコヴェツキーによる弦楽三重奏編曲は今では定着した感もあるが、この弦楽四重奏+チェンバロという編成はおそらく世界初の録音。表記がないため、編曲者は不明であるが、これが実によくできている。弦楽四重奏に、通奏低音に徹したチェンバロが加わるだけで、なんだかオーセンティックな演奏に聞こえてくるから不思議である。まるで作曲当時から、このような編成で演奏されていたかのようだ。演奏は、コンチェルト・イタリアーノでファースト・ヴァイオリンを務めることの多いニコラス・ロビンソン、ターフェルムジーク・バロック・オーケストラでミュージックディレクターを務めるエリーザ・チッテーリオら名手が揃い、そこに日本が誇る鍵盤奏者、渡邊孝がチェンバロで加わっている。この渡邊孝のチェンバロが、通常なら主役のはずなのに、ここでは支え役に徹しながらも、随所に存在感を見せる、そうしたバランス感覚がすばらしい。弦楽四重奏だけでは、絶対この演奏は成り立たないのである。
     実はこの録音、2016年に発売されていたものであるが、日本にはほとんど入ってきていなかった。今回も限定的な入荷ではあるが、CDショップに流通するようになったのは喜ばしいことだ。バッハ・ファンはぜひとも聴いていただきたい一枚である。お早めに!(須田)

  • バッハの新しい協奏曲?アレンジによるオルガン作品集
    『J.S.バッハ:ニュー・コンチェルト〜弦楽によるオルガン作品集』

    カプリコルヌス・コンソート・バーゼル

    CHRISTOPHORUS CHR77447 輸入盤

    バッハは当時、流行の最先端であったイタリアの協奏曲を鍵盤楽器の独奏作品に編曲することで、その音楽技法を研究し、習得し、自らの作風を形成していく上で役立てました。主にイタリアのヴァイオリン協奏曲を鍵盤独奏曲に編曲した作品が有名だが、バッハはオリジナルの鍵盤独奏曲にもそうしたイタリアの協奏曲の手法を取り入れていた。そうであるならば、バッハの鍵盤独奏曲を弦楽器のきょうとしてアレンジし、演奏することもあったのではないか、そうした仮定による視点から企画された画期的な試みがこのアルバムである。バッハのオルガン独奏曲を弦楽合奏と通奏低音用にアレンジ。幻想的からコラールまで幅広く選ばれている。バッハのオルガンのトリオ・ソナタを弦楽のトリオ・ソナタとして演奏する試みは、ほぼ定着しているが、ここまで幅広い形式のオルガン独奏曲を集めて、アレンジしているのは稀だろう。この演奏では、通奏低音にオルガンが使用されているので、さながら教会ソナタのようなスタイルになっており、バッハの新しい合奏協奏曲としてもその体裁が整えられているところが面白い。
    古楽の教育機関の最高峰バーゼル・スコラカントールムで学んだメンバーによる気鋭のピリオド楽器グループによる堂々とした演奏は、オルガン曲として聴き慣れた作品に新しい息吹を与え、新鮮な音楽として提示している。特に、全曲のアレンジも担当し、音楽監督も兼ねているペーテル・バルツィのヴァイオリンの巧さには舌を巻く。時折、ヴァイオリン独奏部分が導入され、タイトル通り、バッハの新しい協奏曲集のような仕上がりになっている。バッハのオルガン作品からイタリア協奏曲的な要素が引き出されており、その影響を音として認識できるとともに、バッハ作品の奥深さえ感じることができる素晴らしい内容である。バッハ・ファンなら、ぜひ試してほしい1枚だ。(須田)

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