フルート FLUTE

フルート 二言三言

第9回 エルクハートの巨人「ジャック・ムーア」

今回紹介させていただきたいのはJACK MOORE(ジャック・ムーア)氏によるフルートです。
アメリカのフルートというと、ボストンの工房のものが数多く頭に浮かぶのですが、このジャック・ムーアはインディアナ州の都市、エルクハートで製作されたフルートです。ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

エルクハートにはフルートに限らず数多くの管楽器工場・工房があり、古くからバンドをはじめとするアメリカの楽器需要をまかなってきました。BACH、CONN、KINGといった伝統あるブランドを初め、ARMSTRONG、Artrey、Gemeinhardt等、その数は大変豊富。
現在では企業や工場の買収が行われ、これらの中にはブランドだけが残っているというケースもあるのですが、かつてはそれぞれが独立した楽器メーカーとしてしのぎを削っていました。

ムーア氏はアームストロング社の技術者でした。
フルート部門の最高責任者を務めていたという記述をかつて目にした記憶があります。言われてみるとヴィンテージ物のアームストロングフルートには大変良いものも多くあり、ジャック・ムーアの雰囲気と共通するものを感じたこともありました。

私がかつて読んだ「フルートは今」という本にはアームストロング社でも研究・試作を重ねていた「マレーフルート」のことが書かれており、この開発・研究をムーア氏が行っていたようです。
現代音楽への用途などで注目されたものの、実用化はされていませんが、その複雑なフォルムから、その研究者にただ者ならぬ匂いを感じ取ったものです。

さてそのムーア氏によるフルートです。
ボストンの工房のハンドメイドフルートはソルダードトーンホールが基調ですが、エルクハート系はドゥローントーンホールがほとんどです。
ボストンの工房のフルートが緻密に作られているイメージなら、エルクハートはとてもおおらかな印象。

音色も暖かで柔らかく、ボストンほどソリスティックな印象は受けませんが、ムーア氏のフルートが名品であることは、多くの演奏家が愛用したことからもまぎれもない事実です。
このエルクハートサウンドを愛した演奏家も多かったのです。

近代都市ボストンとは対照的な田舎町エルクハート。
フルート好きの皆様、こんなフルートもお持ちになってみてはいかがでしょうか?

(文責 細村)